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このたび第14回音楽教育振興賞をいただきました。ZEROキッズにとっては、賞と名のつくものは初めてのことで、とても嬉しく思います。10年経って、やっと世間から認めてもらえた気がします。そしてこの間、ZEROキッズに関わったたくさんのこどもたち、大人たち、指導してくださった皆様、応援してくださった皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。 ZEROキッズとして活動をはじめてから正確にいうと12年目になります。社会教育に位置するこの音楽活動の原点は歌好きなお母さんたちのネットワークだったといえるでしょう。1993年のなかのZERO大ホールの開館記念事業に親子200人でオペレッタをやった後、1994年1月に設立したのですが、その原動力となったのは、地域の少年少女合唱団とお母さんたちのコーラスグループの子育て中のお母さんたちでした。その活動を含めるともうかれこれ18年くらいになります。 ZEROキッズを始めたのは、教育の危機感からといったら大袈裟でしょうか? その危機感とは何かというと、こどもたちが自分で考えたり表現したりできないということでした。最初のオペレッタの時(1993)に、決まった振り付けや歌は歌えるけれど、自分の台詞がなかなか言えない。役や背景を考え想像していない、周りをとても気にしているこどもたちの姿が気にかかりました。本番は大成功でしたが、練習中のそれがなぜなのかということがひっかかり、開館記念事業が終わった後にZEROキッズとしての活動を始めた大きな理由です。 音楽教育振興賞の選評に「学校五日制や総合的な学習の時間の設立趣旨と合致した地域活動」とありました。当時、私たちは自分のこどもを通して教育の危機感を切実に感じ、誰かがやってくれるのを待っていたら我が子は育ってしまうので、学校や文部科学省に先んじてこういう活動を始めたのです。 ごく普通の親だった私たちが、我が子を通して教育の問題と向き合うことになり、学校でもお稽古ごとでも従来の地域でもやっていなかったことを、親がやらねば誰がやる!と、音楽活動から始まって様々な体験活動に活動を広げてきました。 ですから、はじめから今のような創作ミュージカルをつくろうとかは思っていませんでした。 まずは、子どもたちが安心して自分を表現できる「場」をつくること、五感を十分に使って自分がどう感じているかを気づく「時間」を保障すること、それが課題でした。さらに実体験がないために言葉からイメージを膨らませることができない現実には、自然体験や手てモノを作る体験がどうしても必要でした。 そんな体験活動を重ねているうちに体験から感動が生まれました。「場」と「時間」の保障があれば、こどもたちは本来持っている好奇心、探求心、想像力を発揮し、大人には予測のつかない面白さを持った動きや言葉が輝き出します。それはすごい力をこどもは持っているのです。その感動を誰かに伝えたくて、ミュージカルという形になったわけです。だからミュージカルはキッズのメッセージなのです。 今まで、運と縁とカンに頼ってとにかく突っ走ってきたようなものです。幾度となくこれでやめようかと思うこともありましたが、こどもたちの笑顔に会いたくて、また周りの人たちの善意に支えられて続けてきました。 この10年の間に、こどもたちが大人にたくさんのことを教えてくれました。そして、こどもたちのパワーと、様々なジャンルの本物をこどもたちに提供してくれる指導者にめぐりあい、活動を支えてくれる周りの方々の愛に支えられ、こどもたちの体験と想像力から生まれた創作ミュージカルをつくることができたのだと思います。それらをつないでくれたのは、こどもと音楽の力です。 技術面での課題はまだたくさんありますが、幼児から中学生、そして大人まで世代を越えて心をつなぎ、夢を創っていくプロセスに心を躍らせ、心に感じたことを皆で形にし、音楽を媒介として多くの人に伝える喜びは、子どもたちの心を大きく育んでいると確信しています。 これからも地域の音楽活動として、文化芸術活動、教育活動、まちづくり活動として、ZEROキッズをやっていきたいと思います。 どうか、温かいご支援をお願いいたします。 |
2005年5月 特定非営利活動法人ZEROキッズ 理事長 佐々木 香 |
受賞の写真は島の新聞社 音楽教育振興賞音楽教育振興財団 |
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