作詞:下村千別 作曲:未詳 文部省唱歌 明治45年(1912年)
燈火(ともしび)ちかく衣縫う(きぬぬう)母は 春の遊びの楽しさ語る 居並(いなら)ぶ子どもは指を折りつつ 日数かぞえて喜び勇む 囲炉裏火(いろりび)はとろとろ 外は吹雪(ふぶき)
囲炉裏(いろり)の端(はた)に繩(なわ)なう父は 過(す)ぎし昔の思い出語る 居並(いなら)ぶ子どもは ねむさ忘(わす)れて 耳を傾(かたむ)け こぶしを握(にぎ)る 囲炉裏火(いろりび)はとろとろ 外は吹雪(ふぶき)
囲炉裏(いろり)のそばで裁縫(さいほう)をする母や縄(なわ)をなう父の姿は、今の日本では見られなくなりました。春を待つ農村の冬の夜、囲炉裏端(いろりばた)での家族団(だん)らんの懐(なつ)かしさが感じられる歌、でも2番の歌詞(かし)の「昔の思い出」と「こぶしを握(にぎ)る」がどうも変な感じだと思いませんか?この「過(す)ぎし昔の思い出語る」の部分は最初に書かれた時は「過(す)ぎしいくさの手柄(てがら)を語る」でした。ここに出てくる父親は日清(1894年)・日露(にちろ)(1904年)の戦争体験者なのでしょう。
囲炉裏(いろり):室内の床(ゆか)の一部を四角に切り抜(ぬ)いて火をたくようにした場所。暖房(だんぼう)・煮炊(にた)きに用いる。