日本の歌はおもしろい

夏は来ぬ

作詞:佐佐木信綱 作曲:小山作之助 明治29年(1896年)

歌詞

の花の にお垣根かきね
時鳥ほととぎす 早も来鳴きて
忍音しのびねもらす 夏は来ぬ

さみだれの そそぐ山田に
早乙女さおとめが 裳裾もすそぬらして
玉苗たまなえ植うる 夏は来ぬ

たちばなの かおるのきばの
まど近く ほたる飛びかい
おこたりいさむる 夏は来ぬ

おうちちる 川べの宿の
かど遠く 水鶏くいな声して
夕月すずしき 夏は来ぬ

五月さつきやみ ほたる飛びかい
水鶏くいな鳴き の花きて
早苗さなえ植えわたす 夏は来ぬ

解説

作詞さくしの佐佐木信綱さんは近代日本歌壇かだん巨星きょせいと言われる歌人、「の花」「さみだれ」「ほたる」など夏の季語で古典的な日本の初夏の情景じょうけい表現ひょうげんされています。

夏は来ぬ=「ぬ」は文語で、完了かんりょうの助動詞。「夏がきた」という意味。
の花=ウツギの通称つうしょう、夏に白い小さな花をかせる
さみだれ=五月雨、五月にる雨
早乙女さおとめ=田植えをする女の人
裳裾もすそ=着物のすそ
玉苗(たまなえ)=田植え用の稲(いね)の若い苗(なえ)
おうち=センダンの古名、春に薄紫(うすむらさき)色の花をつける
水鶏くいな=水辺の草むらにすむクイナ科の鳥の総称そうしょう