作詞:石森延男 作曲:下総皖一 文部省唱歌 昭和17年(1942年)
遠い山から 吹(ふ)いて来る 小寒い風に ゆれながら けだかくきよく 匂(にお)う花 きれいな野菊(のぎく) うすむらさきよ
秋の日ざしを あびてとぶ とんぼをかろく 休ませて しずかに咲いた 野辺(のべ)の花 きれいな野菊(のぎく) うすむらさきよ
霜(しも)が降(お)りても まけないで 野山や山に むれて咲(さ)き 秋のなごりを おしむ花 あかるい野菊(のぎく) うすむらさきよ
「野菊(のぎく)」はひとつの種類ではなく、野に咲(さ)く菊(きく)に似(に)た花のことです。冬に向かって寒さが厳(きび)しくなる中、清らかにけなげに咲(さ)いている野菊(のぎく)を歌っています。この歌が生まれた前年に太平洋戦争が始まり、日本は戦争への道に突(つ)き進んでいました。軍部から歌詞(かし)が軟弱(なんじゃく)すぎると言われ、作詞(さくし)の石森さんは「勇壮(ゆうそう)さと共にやさしさ(和)も日本伝統(でんとう)の精神(せいしん)です」と主張(しゅちょう)し乗り切ったそうです。作曲者の下総(しもふさ)さんは「夕焼け小焼け」「たなばたさま」ほか3000曲ほどの作品を残しています。